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小鹿を解放



桐生の山の入り口にはイノシシや鹿を捕らえる罠の檻が仕掛けてある。年に一二回ほどイノシシがかかって地主の山本さんが銃殺しさばいて食用にされる。

一昨日に山に入ると小鹿が罠の中にいる。頭で檻にぶつかって出ようとするが檻は頑丈だから出られるわけがない。

夕方に帰宅するときに小鹿にそっと言った。「生まれて小さいのに、可哀そうだけどさよなら」って。胸が詰まる思いだった。

昨日の昼過ぎに山に入ると小鹿がまだ処分されずに檻にいる。地主がまだ見ていないんだ。小鹿は私をじっと見つめている。クリっとした目でじっと見る。

いたたまれなくなって檻の戸を持ち上げた。小鹿は私をしっかりと見たあと檻から出た。そして山に向かった。

地主さんには叱られるかもしれんけど、自分の素直な気持ちが後先を考えずに開けたんだ。地主さんに謝るしかない。

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